2019年6月の新聞報道をされて以来、新たな問題点が次々と発覚しています。
内部告発の情報も重なって、かんぽ生命に関する報道は一向に留まらず、毎日のように新たな情報や問題点を指摘する記事が頻発しているような状況です。
今回のかんぽ生命に関する問題は現在のところ監督官庁である「金融庁」から具体的な発表がありませんので「不適切営業」という表現をされていますが、内容が解明されるにつれて今後はどのような表現になるのかは分からない状況です。
かんぽ生命とかんぽ生命の保険販売の委託を受けた日本郵便について様々な問題が大きく取り上げられていますが、問題の発端、きっかけとなるのは1点です。
保険見直しが不適切な営業の元に行われた
ということではないかと、私は個人的に見ています。
営業評価優先の保険見直し
今までの報道で出てきている問題はすべて「保険見直し、保険切替え、保険乗換」によって起こっている問題であると言えます。
私自身このホームページを使って「保険見直し、保険切替え」ということについては様々な角度からよりフラットに状況を保険を選ぶ人、加入する人、契約者がしっかりと選択できる情報をお伝えすることに努めています。
保険の切替や保険の乗り換え自体は悪いことでもありませんし、保険を見直すことによって、より良い状態の保障を得られることも多々あります。
時代は変わり、以前からの旧い保障内容のままでは現代の医療技術に対応できない。保障内容に不足がある。ということは実際に起こっています。

契約者主導ではない保険見直し
今回のかんぽ生命の問題で、最も重視しなければならないのは保険を実際に選び、保険料を支払う人である「契約者」ではなく、保険を販売する営業担当者を重視した保険販売をしている傾向が強く出ていたということです。
古いままの保障をそのままにせず、お客様に積極的にアプローチして、よりお役に立つ、時代に合った保障内容に見直すことは必要です。
しかし、残念なことにその目的が契約者にとっての利益を重視したものではなく、営業担当者や販売をする支店、郵便局のノルマや営業成績、個人の業績、成果給を重視したものであったということは報道各社の記事から分かります。
同一保険種類の切替の評価
保険の切替による営業成績の評価というのは、実は他の保険会社でも行われています。
実際に私が取り扱ったのは3社の生命保険会社 (かんぽ生命は含まれていません) でしたが、どの保険会社であっても保険の切替時に営業評価が落ちる、収入が減るということはありました。
例えば、同一の保険会社の契約で
- がん保険(契約中) ⇒ 別のがん保険
- 医療保険 (契約中) ⇒ 別の医療保険
- 終身保険(契約中)⇒ 別の終身保険
というように、同じ保険会社に加入している契約者(被保険者)が同一種類の保険に入り直しをしてもらった場合、新しく販売した分に対する収入は少なくなる仕組みになっていました。
ですので、実際の営業現場では新たに獲得した契約の収入が100%の満額ではないことを販売者側が理解した上で販売していました。
お客様との信頼関係の厚さ
このように同一保険会社間での保険契約の見直し案件は営業成績が100%評価されないことが事前に分かっていましたので、ある意味では「仕方が無いこと」と諦めていました。
今回のかんぽ生命で起こっている問題の報道をみて驚いたのは、保険会社の担当者とお客様との信頼関係の厚さです。
今回はその信頼関係を悪い方に使ってしまった良くない事態が発生しています。
お客様に保険料の2重払いをしてもらったり、無保険期間を作る。
そのような行為自体は、私が現役で保険を販売していたこと、保険代理店を経営し営業担当者を指導する立場にあった頃には全く出てこなかった発想でした。
また実際にそのような手法を知っていたとしても、そんなことをお客様に対して行うことはできなかった思います。
上司からのプレッシャーとお客様との関係
今回の問題で「誰が悪い」ということは、様々な要素が絡み合って結論は出ないかもしれませんが、少なくとも被害を受けているのはお客様である保険契約者であることは明白です。
私が保険を販売していた頃は、私自身が経営者であり、代理店として保険販売の責任者であったことから社内におけるプレッシャーというものはありませんでした。
また、私が取り扱っていた各保険会社はコンプライアンスという面で非常に厳しい規制と管理を代理店に対しておこなっていましたので、私自身が代理店経営にリスクを取らないという点でも、今回のような問題は起きることは無く、その発想さえもありませんでした。
しかし、かんぽ生命や郵便局の組織内における報道は、基本給の低さと新規の営業成績を確保しなければ組織内で存続していくことができないプレッシャーは相当なものだったのだろうと思います。
一連の報道によって、悪い膿が出された、浄化作用が働いとも言えます。
しかし、旧態依然とした組織の仕組みは、もう少し早い段階でキレイにされておくべき事柄であったことは明らかです。
乗り合い代理店の場合は
一つの保険会社の商品だけを扱う場合は、上記のような問題が発生します。
かんぽ生命の保険から、同じかんぽ生命の保険に切り替えた場合です。
しかし、以下の場合は営業成績や収入に影響することはありませんでした。
異なる保険会社の契約を切り替え
- A保険会社のがん保険 ⇒ B保険会社のがん保険
- E保険会社の医療保険 ⇒ F保険会社の医療保険
- M保険会社の終身保険
例えば、既にA社のがん保険に加入しているお客様が保険の相談に来られて保険見直しを希望されるとします。
複数の保険会社の商品を販売している代理店として、お客様の意向を満たすのはB保険会社のがん保険の方がよりニーズに近い、お客様の希望も満たしている。
そこで、A社からB社のがん保険に切り替えてもらった。
この場合は、収入の減少や営業成績への影響は一切ありません。
新規で契約をもらったB保険会社からすれば、まったく新規のお客様になるからです。
人間が入る契約手続きのデメリット
今回のかんぽ生命の問題は、人間が契約の間に入り込むことによって起こるデメリットが最大限に発生した事案ではないでしょうか。
販売組織の仕組みにもよるのですが、
人間が保険商品を販売すると、どうしても「営業成績による評価」というものが付きものになってきます。
私自身が関わった保険販売の組織では個人単位での営業成績は重要視することが無く、個人のインセンティブの要素が無い給与形態でした。
しかし、代理店という一つの組織単位で見た時には営業成績による評価は同時に「会社経営」直結します。
当然のことですが、営業成績が落ち、売上が落ち、会社(代理店)に入ってくる収入が減少すれば、従業員に支払う給与の原資が減りますので、給料が減少する可能性がありました。
メリットでもあり、デメリットでもあるのですが、人間が販売する以上。人が本来持っている「エゴ・欲求」に影響を受けるのは当たり前のことです。
信頼できる人に相談できる安心感
今回のかんぽ生命の問題では、郵便局という巨大な組織と、日本国という大株主がバックにいるかんぽ生命に対する信頼感から生まれた問題とも言えます。
信頼度が高かっただけに、反発も大きく、問題も大きくなっています。
保険という商品はどうしても構造が仕組みが分かりにくく、一般消費者が本当に理解して、納得して入るのは難しい商品でもあります。
不安で、不確定な要素がある「保険」であるからこそ、信頼できる人に相談し、お任せをすることのデメリットが前面に出てしまいました。
こうなってしまうと、本当に「誰に相談したらいいのか分からない。」誰も信用できない。という状態になってしまいます。
保険業界自体は良くも悪くも「人」が深く関わって成立してきた業界であるとも言えます。
時間はかかると思いますが、信頼回復に向けて前向きに問題が解決していくことを願います。