友人からの相談で
学資保険として「ドル建ての終身保険」を提案されているけど
学資金の準備としてはどうなのか?という相談がありました。
ここで疑問に思ったのは?
ということです。
学資保険がオススメされていない理由
10年ほど前は学資保険に人気が集まっていました。
学資保険の商品自体も非常に魅力的で、販売する側にも魅了的という、双方にとってメリットの大きな保険商品だったのです。
そのため、学資保険をメインとした販売をしているような保険代理店もあったくらいです。
学資保険が魅力的だった理由
学資保険が魅力的だったとはどういうことでしょうか?
学資保険の魅力のポイントは「支払った保険料がどれくらい増えるのか?」ということです。
学資保険には2つの要素があります。
- 契約者(親)が死亡した時に保険料の負担がなくなる
- 将来、学資金として必要なお金が必要なタイミングで用意できる
現在、販売されている学資保険も上記2つの要素はしっかりと兼ね備えていますが、問題は「払ったお金が増えない」ということなのです。
以前の学資保険は保険料を支払った以上のお金を受け取ることができました。
将来必要となる入学金や授業料などの学費に必要なお金を必要なタイミングで用意できる機能に加えて、そのお金が支払った保険料以上で受け取れたのです。
ところが、最近(2020年)の学資保険は支払った保険料よりも低い金額のを将来、受け取るという学資保険もあります。
こういうことになってくると、学資保険に入ってお金を預けると「将来、お金が減って戻ってくる」ということになります。
ですので、学資保険を選ばれる際には「どれくらいお金が増えるのか?またはお金が減るのか?」ということを見積書、設計書の段階でしっかりと把握しておく必要があります。
販売者のメリットとは?
わたしが以前に販売をしていた保険会社では学資保険の販売をすると販売した金額(年間の保険料)がそのまま、売り上げとして評価されていました。
例えば、
- 月額保険料1,000円の医療保険
- 月額保険料10,000円の学資保険
上記2つの保険であれば、保険会社からの評価(営業成績)として高いのは保険料が「1万円の学資保険」ということになります。
今では金融庁の指導もあって廃止されてきていますが、
高い評価を受けることによって、販売元の代理店や営業担当者は表彰される、海外旅行に招待される、特別なインセンティブ(ボーナス)を受け取れたのです。
双方にメリットがあった
お客さんは預けたお金が、預けた金額以上に増えて、しかも将来は学資金としてしっかりと準備ができる。
販売元は多くの学資保険を販売することで保険会社から高い評価を受けて収入も上がる。
保険会社は保険料収入が上がり、多くのお金を集めることができる。
ということで、関わる全ての人、会社にとってメリットが大きかったのが学資保険の以前の状態でした。
お金を預かるほどマイナスに
学資保険というのはお客様から預かったお金を運用して、運用に成功することでより多くのお金を将来支払うことができる。
という金融商品になります。
ところが、時代の変化によって状況が一変してしまいます。
お金を預かってもお金を増やすことが難しくなり、
さらにはお金を預かることが「マイナスになる」という状況になってきたのです。
そのため保険会社は大きく変化し始めました。
- 学資保険の販売を評価しない
- 学資保険の予定利率の見直し
- 学資保険の販売中止
といったように、学資保険を積極的に売り出さなくなったのです。
需要はあるが売れる学資保険は無い
学資保険という商品そのものが無くなったり、
学資保険はあるものの保険会社から評価されないので、保険代理店や営業担当者は販売しない。
という状況になってはいますが、需要としては残っています。
子供は生まれ、将来に向けて学資金を準備しておきたいという親の気持ちが変わることはありません。
しかし、今までのように
「子供が生まれたら学資保険に入っておいた方がいいよ」という発想やアドバイスは無くなってきています。
というのも、学資保険自体の存在が影を潜めているからです。
販売できる代用商品でカバーする
販売側の事情として考えてみるとどうでしょうか?
学資金を準備しておきたいという、お客様のニーズ、需要はまだまだ存在している
けれども、学資保険という商品そのものは販売できなかったり、販売してとしてもお客様にメリットが少ない(もしくは無い)のでオススメができない。
さらには、販売したとしても営業成績として評価されない。
ということになると、お客様からのニーズ、要望に答えるためには代用の保険商品でカバーできるものはないか?と考えます。
代用の条件は
- 学資保険のような機能がある
- 販売することで売上、収入がある
保険代理店や営業担当者は慈善事業として保険を販売しているわけではないので、保険商品を販売することによって収入の目処が立たなければ販売する意味がありません。
当然のことですが、売って売っても収入にならない。
そんな商品を売っていれば、どんな業種であっても破綻してしまいます。
終身保険で代用
学資保険が販売しても評価されなくなり、利率も下がって商品としての魅力て落ちてきた時に
学資保険の代用商品として注目され、推進されたのが「終身保険」でした。
今までの終身保険は「葬式準備保険、相続対策保険」というように高齢者の方に需要がある保険でした。
「終身保険」というのはその名の通り、いつまでも保障が続くという意味です。
人間はいつ亡くなるかわかりませんので、保障がずっと続くことによって確実に保険金を受け取れるという点でメリットがあります。
この終身保険を学資保険の代用して使うということです。
終身保険の短期払いを利用
終身保険は保険料の払込期間をより短期間にすることによって、払込期間が終わると支払った保険料が運用されて増えていく。という仕組みがありました。
この期間を短く設定して、ちょうど子供が高校、大学を受験する年齢に合わせて設計する。という方法です。
ところがこの「終身保険」という保険商品もだんだんと利率が悪くなり始め、商品自体を販売停止にしたり、短期払いの商品を取りやめたりする会社が増えてきました。
こうなると、次の行き先として出てくるのは
外貨建ての終身保険を学資保険の代わりに
日本円ではなく、米ドルや豪ドルなどの外貨で運用する外貨建ての終身保険を学資保険として販売、提案されてきたのが今回の事例です。
ここまで、販売側の事情を暴露してきてしまいましたが、
販売側からの事情とすると
外貨建ての商品はある程度は営業成績としても評価される場合も多く、支払う保険料の金額にもよりますが収入としても確保しやすい保険種類です。
そのため、「子供の学資金を準備しておきたい」というお客様からのニーズに対して
◆学資保険が販売できない
◆終身保険もいい商品がない
外貨建ての終身保険はどうでしょうか? ということになってきます。
為替リスクのある商品が適正なのか?
商品の提案時や加入前の重要事項説明時には必ず説明されると思いますが、外貨建ての保険の場合は「為替リスク」が確実に存在するということです。
米ドル円であれば本日(2020年7月10日)時点では「1ドル=107円」。
では、お子さんが高校入学、大学入学といった学資金が必要なタイミングで為替相場どうなっているのか?
それは誰にも分かりません。
また、基本的には為替相場が変動することによって得られる利益と損失を理解が難しいのであれば、このような商品には手を出さないことをオススメします。
というのも、学資保険に入る目的は「子供の教育資金の準備」です。
この大前提を忘れてはいけません。
変動する保険商品が確実に必要な教育資金に適切か?
ここからは私の個人的な意見ですので、判断のための一つの材料としてお役立ていただければと思います。
学資保険の加入目的である「将来、必ず必要な教育資金の準備」と言った確実性の高いお金の準備を
変動が起こる可能性の極めて高い、外貨建て保険での運用が適切なのかどうか?ということには、非常に疑問があります。
実際にお金が必要となる大学入学時に外貨建ての保険の運用成績を見てみると「為替相場の変動によりマイナス」となっていて、必要なお金が確保できない。
ということになれば、意味がありません。
当然ながら、日本円がどこまで確実なのか?と言われるとお答えできないことなのですが、外貨建てにするよりは確実性が高い可能性は高いと考えられます。
保険以外の選択肢もある
今までの常識は「子供の教育資金の準備は学資保険」でした。
しかしそれは10年ほど前までのお話です。
現時点での状況下では、学資保険そのものを販売している会社が少なくなり、積極的には販売されていない状況にあります。
お金を預け、運用する。ということであれば保険に限って考える必要はありません。
金融商品、投資に関する知識を広め、ご自身に合った運用方法を見つけることができれば、学資保険だけに囚われずに考えることができます。
まとめ:教育資金の準備にはオススメしない
学資保険をどのように活用するのか?の考え方は当然ながら人それぞれにあります。
今回の外貨建てということであれば、将来の為替相場の動きがどうなるのかは誰にもわからないので「正解がない」選択ではあります。
しかし、学資保険に加入する根本的な目的「教育資金の準備」という大前提を忘れることなく、保険を考えることが何よりも重要です。